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「絶対に破られない暗号」とメディアリテラシー

スルーしようかと思ったけど、結城さんが反応してたのでつられて反応してみる。

われわれの開発した暗号方式は、数学的に解読が不可能であると証明されています

「解読が困難」なのではなく「解読が不可能」だという。

われわれはもともと数学研究者であって、暗号とかソフトウェアとは関係がないんです。(中略)マッシモ・レゴリーさんというコンピュータの専門家が、これは暗号に使えるのではないかと言い出したんです。

学会発表やメディアへの公表、特許申請などは一切行わず、さまざまな用途に合わせたプロトコルの開発を進めてきた

ここまで読んだ時点で、具体的に何が画期的なのかが全く書かれていない。でも、ツッコミどころはたくさんありそう。

  • 「解読不能は数学的に証明」 ← それってワンタイムパッドか量子暗号(これも数学的じゃなくて情報理論的に安全らしいけど)くらいじゃ?
  • 本当に解読不能ならアルゴリズムを公開して特許を取得した方が確実に儲かるはず。言えない事情がある?

もしかしたら本当に有史始まって以来の大発明の瞬間に立ち会っているのかもしれないけど(ってか、そうだったら起業せずに論文書いて1000年後まで名前を残した方がいいと思うけど…)、今の時点ではそうじゃない可能性が高いなぁ。 こういう時には、結城さんの「暗号技術入門」がとっても参考になる。 こういう素晴らしいことが書いてあるので、この本は手放せないんだよなぁ。

暗号製品の宣言文句に「この製品は絶対に解読されない暗号アルゴリズムを使っています」と書かれていたなら、その製品の安全性は疑ってかかるべきです。なぜなら、絶対に解読されない暗号アルゴリズムは存在しないからです。 (中略) 厳密にいえば、絶対に解読されない暗号アルゴリズムも存在します。これは使い捨てパッド (one-time pad) と呼ばれていますが、現実的なものではありません。

んで、ちょっと残念なのが @IT の記事の構成。 インタビューだから仕方ないんだろうけど、アルゴリズムが秘密の暗号は信頼できないという暗号の常識に反する内容なんだから、もう少しツッコミが欲しかったなぁ。「その安全性についても、理論的裏付けがあるとはいえ今後は専門家による検証が欠かせない」と一行書いてあるけどね。

代わりに、はてなブックマークで反応を読めるってのは、いい時代になったと思う。 個人的には、id:ytoさんのコメントがなるほど、と思った。

よく分からんが、値を返す無名関数とそれへの入力値、をペアでキーとして用いるようなもの?

追記

@IT から補足の記事が出ています。

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